遺産整理は誰に依頼するのがよいか
1 遺産整理で行うことについて
遺産整理とは、被相続人(お亡くなりになられた方)の財産や債務を調査し、相続人の方へ適切に引き継ぐための一連の手続き等を指します。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
① 相続人の確定(戸籍収集による法定相続人の調査)
② 相続財産の調査(預貯金・不動産・株式・保険・負債など)
③ 遺産分割協議書の作成
④ 不動産の名義変更(相続登記)
⑤ 金融機関での相続手続き
⑥ 相続税の申告と納税
また、場合によっては債務整理や不要資産の処分をすることもあります。
これらは民法、相続税法、不動産登記法など、複数分野に渡る法律の知識やノウハウを必要とするため、すべてをひとりで完結させるのは簡単ではありません。
そのため、多くの場合は各分野の専門家に依頼して進めることになります。
以下、各手続き等をどの専門家に依頼すればよいのかについて、具体的に説明します。
2 相続財産調査・相続人調査を依頼できる専門家
多くの手続きの前提として、相続人と相続財産を正確に把握することが必要とされます。
調査業務を依頼できる専門家は、主に弁護士、司法書士、税理士、行政書士です(ただし、いずれも委任した業務の目的の範囲内で可能です)。
相続人調査をする際には、基本的には被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本と、相続人の現在の戸籍謄本を取得します。
代襲相続が発生している場合には、被代襲者の出生から死亡までの連続した戸籍謄本も取得します。
相続財産調査においては、現金や預貯金、有価証券、不動産、相続税申告を見込む場合には保険契約、ローン(債務)などを漏れなく調査します。
司法書士は、戸籍収集や財産調査に加え、後述する不動産の相続登記も一括して依頼できるため、相続財産に不動産が含まれる場合に適しています。
相続財産が多く、相続税の申告・納付が見込まれる場合には、相続税申告を依頼できる税理士に相続人調査や相続財産調査を任せるのも得策です。
3 遺産分割協議書作成を依頼できる専門家
相続人と財産が確定したら、相続人全員で誰がどの財産を取得するかについて話し合い、その結果を反映した遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書は、相続登記、預貯金解約、株式の名義変更、相続税申告など、ほぼすべての手続きで使用されます。
遺産分割協議書の作成は、弁護士、司法書士、税理士、行政書士に依頼できます。
ただし、相続人間で遺産分割に関する利害調整や交渉が必要になる場合には、弁護士にしか依頼できません。
その他の士業は、あくまでも相続人間で合意した内容を遺産分割協議書に反映するという範囲で扱うことができます。
4 相続登記を依頼できる専門家
相続登記とは、被相続人が所有していた不動産の名義を、相続人に変更する手続きです。
相続登記を依頼することができるのは、司法書士と弁護士です。
2024年4月からは相続登記が義務化されましたので、期限内に確実に行わなければなりません。
基本的には、自己のために相続の開始があったこと、かつ当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、法定相続分での登記をする必要となります。
法定相続分での登記をした後に遺産分割をした場合は、遺産分割をした日から3年以内に相続登記をする必要があります。
3年以内に遺産分割ができる場合には、遺産分割後に1回相続登記をすれば問題ありません。
遺産分割協議が長引いている場合、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることでも、一旦は義務を果たしたことになります。
その後に遺産分割講義が完了したら、遺産分割の日から3年以内に相続登記をする必要があります。
正当な理由なく相続登記をしなかった場合、10万円以下の過料に処すると定められています。
相続登記の申請の際には、相続登記申請書のほか、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書、登録免許税などを管轄の法務局に提出します。
相続した不動産を売却するためには、通常であれば相続登記を済ませている必要があります。
5 相続税申告を依頼できる専門家
相続財産(生命保険金などのみなし相続財産含む)の評価額が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、基本的には相続税の申告と納税が必要になります。
申告と納税の期限は、相続の開始を知った日(一般的には、被相続人の死亡日)の翌日から10か月です。
相続税申告を依頼することができる専門家は、税理士のみです。
相続税の算定にあたっては、相続財産を調査したうえで、相続税特有の評価方法に基づいて各相続財産の評価額を求め、その評価額に対して税率を掛け合わせます。
特に土地や非上場株式の評価方法は複雑であり、評価方法や特例適用の有無によって税額が大きく変わることもあるため、相続税に強い税理士に依頼することが重要であるといえます。
配偶者控除や小規模宅地等の特例を用いることで相続税額が0円になる場合であっても、相続税申告は必要となります。
このように、相続税には注意点がいくつも存在しますので、少しでも気になる点があれば税理士に相談することをおすすめします。
相続手続きの期限 生前贈与を受けた後で相続放棄をする場合の注意点

























